「埋伏歯」はあまり聞きなれない言葉かもしれません。
犬も猫も幼少期はまず乳歯が生え揃い、4~5か月齢位からどんどん永久歯に入れ替わり始めます。
通常は生えてきた永久歯に押されて乳歯が抜け落ちるのですが、まれに永久歯が歯茎から全く出てこれなくなる現象が起きることがあります。
この現象を「埋伏歯」といい、放っておくといつまでたっても永久歯は生えてきません。
1枚目の写真の子は上顎犬歯の永久歯が1歳近くになっても見えてこないため、避妊手術と同時に確認することにしました。
矢印は犬歯の乳歯です。
埋伏歯かどうかはまずはレントゲンで確認します。
この子はちゃんと永久歯が歯茎に隠れていることが分かりました(青い矢印が乳歯、赤い矢印が永久歯)。
写真は上顎の内側を見たところです。
器具で示している部分にうっすらと永久歯が見えるようです。
切開すると困ったことに永久歯は内側に向かってほぼ水平に生えてきたことがわかりました。
これでは乳歯を抜いたところでこの永久歯は歯としての役割を果たせません。
次に水平に伸びてしまった永久歯をゆっくりと垂直に起こしていきます(途中の写真がなくてすみません)。
慎重にしないと完全に脱臼してしまい、永久歯を抜歯しなければいけなくなります。
ある程度垂直になったら永久歯の内側に歯茎との隙間ができるので、再び倒れてこないように先ほど作っておいた乳歯の根っこを「くさび」として打ち込みます。
仕上げに内側の歯肉を縫合して補強です。
完ぺきではありませんが、完全に横倒しだった状態からすると、かなり正常に近い状態に矯正できました。
あとは上手く定着してくれると良いのですが…。
くさびとして打ち込んだ乳歯の歯根はいずれ吸収されてしまうようです。
本来自分の体の一部なので、異物反応の心配もいりません。
今回は少し珍しい埋伏歯のご紹介でした。